思いやりの心を育む (2000年)
子供たちの教育環境は大人社会の反映
子供たちは21世紀を担って行く大切な宝と言われて来たが、今や青少年に係わる問題では先が思いやられます。
未だ私たちの記憶にも生々しい数々の17才の少年による殺傷事件、あるいは神戸の少年による児童殺傷事件、その他いじめ、非行、薬物、援助交際、学級崩壊、不登校、ひきこもりなど子供たちの状態は今までにない深刻な様相を示しております。
一方、大人社会では人を殺しての莫大な保険金の詐欺事件、一流企業の幹部が銀行や会社・百貨店などを破綻させてしまったり、車の不良品質情報を闇に葬ったり、食品製造上の安全を軽視したり、官僚や国会議員が収賄や詐欺まがいの行為に走ったり、モラルは完全に地に落ちてしまいました。
この面でも子どもは大人の鏡と言えるのではないでしょうか。
今までの教育
子供たちの一部が今荒れ果てている現状は日本の教育の荒廃もさることながら、大人社会の反映ではないかと考えられます。
特に大人社会の前述の犯罪には社会のエリート層と考えられる人が多く介在していることに驚かされます。
なぜそうなるのかを教育の面からあえて考えて見ました。
勿論、教育制度だけの問題だけでは片づけられないようです。
これまでの日本の学校教育では、多くの知識を頑の中にたたき込まれ、点数獲得競争にかりたてられる。
そこでは専ら友達同志の競争に終始し、ライバル意識が必要以上に助長され、周囲の者を打ち負かすことにエネルギーを注ぐ結果になり、家庭でも学校でも「共に生きる」意識が極端さ土薄くなり、逆に足の引っ張り合いが一般化し、利他の心即ち、思いやりの心が荒廃し、家族もろとも利己主義に走ると言うことになってしまいます。
更に少子化の為、少ない子どもに期待が集中してこの傾向に拍車を掛けてしまいます。
これではとても思いやり、いたわりの心の育みが行われる状況ではないと思います。
それでも殆どのエリートは多くのハンディを背負いながらも自らの努力により品性を磨き、立派な業績を挙げ日本をここまで成長させて来たことに敬意を払うべきです。
思いやりを育む心の家庭教育
これまでの日本の教育は家庭でも学校でも知識や技術の習得、あるいは躾け、いずれも上からの指示、命令によるものに偏っていたきらいがあります。
しかし、心を育む上で大切なのはひとりひとりの心の中から目覚め、自ら実践するようになることです。
家庭においては自然に接し、体験する、額に拝して働く、耕作する、製作するなどの横会を家庭で多く持っことです。
特に望まれることは多くの人が嫌がる仕事(例えばトイレの掃除等)に自ら入り込めるようになることですが、両親自ら率先垂範の心構えが必要です。
そういう環境の中で自然といたわりの心、思いやりの心が育まれて行くと考えます。
広地学園出版部「心の教育」伊藤隆二者参照 OASYO13